指揮者の岩城宏之氏(1932 – 2006)はホワイトアスパラガスが大好きだったそうです。
岩城氏はたくさんのエッセイを書いておられ、その中で頻繁にホワイトアスパラに関して述べられています。
ホワイトアスパラと言っても、氏が好んだのは、ドイツ人が大好きなあの新鮮なアスパラガスではなくて、缶詰のホワイトアスパラです。この当時は日本ではホワイトアスパラって缶詰、瓶詰めしかなかった様な気がします。
私はこれを読んだとき、あの缶詰のホワイトアスパラガスが好きだなんて、と思ったのですよ。私は缶詰のアスパラが苦手です。

もうかれこれ30年位前のことなのですが・・・
それまでアスパラガスと言えばドイツで目にするのは白いものだけでした。私は缶詰のホワイトアスパラガスが苦手だったので、新鮮な白いアスパラガスも缶詰と同じような匂いや味がするのだろう、と思っていて、アスパラガスを食べる気にはなれませんでした。
ですが、日本に住んでいた時は緑のアスパラガスは好きだったのです。
ただこの当時、ドイツではアスパラガスと言えば白いものだけで、緑のアスパラガスを見た事がなかったのですよ。今は時期になればスーパーの野菜売り場でも見かけます。
で、その緑のアスパラガスをドイツで初めて見たのは、旅行中に立ち寄ったデパート(Kaufhof)のセルフのレストラン。
レストランに入って、何を食べようかな?と思いつつ、トレーを持って、ふと看板を見たら
「本日のおすすめメニュー・グリーンアスパラガスのベーコン巻き」
付け合わせが何だったかもう忘れてしまいましたが、ベーコンに巻かれたグリーンアスパラがデン!と皿にのった定食だったのは覚えていて、このグリーンアスパラに惹かれて
「これだ!」と注文したのです。
食事をカウンターで受け取って、レジでお金を払い、テーブルについて、さあ、いただきます!
久しぶりのグリーンアスパラガスにワクワクしながらナイフを入れ、フォークで口に持っていく・・・
「え??」
何これ・・アスパラガスの味が全くしないじゃん!!
せっかくのグリーンアスパラなのに、人参を茹でたものとか、ブロッコリーを茹でたものと味が違わない!
「またか・・・どうしてこうもクタクタになるまで野菜を煮るのよ・・・せっかくのグリーンアスパラが台無し!!」
人間って、期待を裏切られたことは良く覚えているものです。
これはほぼ30年前に私が経験したことです。そう、その当時、ドイツのレストランや家庭の野菜料理というと
くたくたになるまで煮て、どんな野菜でも結局同じ味になっていた
のですから。
そして、その当時、健康にいいのは煮たり炒めたりしていなくて、
「サラダ」
でした。健康に良いから野菜を食べよう、と勧められたものはサラダばかり。サラダオンリー!
野菜って、さっと炒めた方が量が沢山とれるからいいのに・・と思っていましたが、どんな野菜でもくたくたになるまで煮たり焼いたりしていては・・健康に良い、とはもはや言えないですよね・・・
なぜ、本日はこんなクタクタに煮たグリーンアスパラガスの思い出を書いたかというと、本日、この本を読んでいたからです。
すでに一度紹介していますが、佐貫亦男さんの「こだわりのドイツ道具の旅」。
この本で著者がレストランであまり美味しくない食べ物に出会い、
機械と道具に関しては名人のドイツ人が、どうしてこんな料理に仕上げるのだろうか?
「こだわりのドイツ道具の旅・第二章・ドイツ料理を味わう」より
この疑問を抱くとき、料理とは思い切りであり、見切り発車的思考、あるいは予測手法が重要な技術とすれば、少しわかる気がする。
どうやら、ドイツ人は最後の瞬間にサッと決断するのは苦手だったようで・・・
この意見をなるほどなあ・・・と思いながら、そういえばグズグズとつくられたような料理にあたることが多かったなあ、と思い出したのでした。
最近は決断力のある料理人が多くなった(?)ようですよ!
コメント