2008年に発表された小説、2016年に映画化された「オケ老人!」の文庫本をいただいたので、今頃やっと読みました。
先日、紙の本と電子書籍について書き、ドイツに住んでいる私は電子書籍が便利なので、電子書籍を購入して読書をしている、と書きました。
自分で買うのは電子書籍の方が便利なのですが、紙の本だと、「これ読んだから、差し上げるわ」ということもできるのですよね。
というわけで本日は、存在は映画が公開された時に知ったのですが、今回初めてストーリーを知った「オケ老人!」を読みました。
私は映画を見ていないのですが、原作を読んだ感想は、一言でいうなら「思ったより良かった!」です。
「オケ老人!」 荒木源・著
「どうせまた、下手なアマチュア・オーケストラが、何かをきっかけに頑張る気になって、ハードな練習に挫折しかけたり、何か問題がおこったりしながら、それでも音楽を追求して、ついには素晴らしい演奏をする」といったスポーツ根性物のような、日本でよくあるような(?)単純なストーリーかと思っていて(ごめんなさい!)、映画も特に見る気にはなれず、原作の小説があることは存在すら知りませんでした。
実はこういった「とにかく頑張れば・・・」という話はそれほど好きではなく、また、音楽関係だと「現実にはありえない!」ということがすぐにわかってしまって、どうしても楽しめない、のです。
医者の友人と医療関係のドラマを見ていて「こんなのありえない!」と彼女がいう度に「いいじゃない、どうせフィクションなんだし。」という自分なのですが、そんな自分が、音楽関係のドラマなどを見ると、同じような批判をしているのですよね。
ちょっと反省・・・エンターティメントなんだから、と、フィクションだから、と、大げさだと割り切らなくては!
映画の予告編は流石に気になったので、公開された2016年に見ました。
映画ではエリートオーケストラに入団しようとして、間違って老人ばかりのアマオケに入団した数学教師は女性ですが、原作は男性になっていて、どちらでも良い、といえば、それまでなのですが、ストーリーの展開的には男性の方が良いな、と感じました。
(ネタバレは避けたいので、どうして男性の方が良いかは書きませんが・・・)
また、映画には含まれていないらしい、ロシアのスパイ関係の話ですが、これには他の方のレビューを読むと、「必要ない」とありましたが、この話のおかげで、この小説が小説らしくなっているように思えました。
単なる娯楽用の小説の枠にはまらず、ストーリーが少々複雑になった事で、読み応えのある小説に出来上がっている気がします。
映画でこの部分を省略したのは、それはそれで良かったかも、とも思いましたが。小説は小説のよさ、映画は映画の良さがありますしね。
音楽関係のお話は、「こんな事、ありえない!」と思ってしまう事が多い、という事ですが、それでも映画化されている物を見たいなとも思います。
と言うのは、やはり、音楽そのものは文章では表せないからです。
が、この小説の後半に出てきた、コンサートの様子の描写、これは素敵でした。実際に演奏をする人間としては、音楽をこの様に感じて、理解して、一つの風景の描写であったり、ストーリーであったり、と想像しながらメロディーを歌わせたり、伴奏を奏でたりしたいと思っています。
秋、いえ、もう冬の夜長、一気に読めた、楽しく、そしてちょっとスリルもある小説でしたよ。
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